
このタイプは、そのタイプ名称が示す通り、内面的な厭世感を抱きつつも、外面では社交性を維持しようとする特徴を持っています。このパターンはNP(母親的自我)とFC(自由な子供の自我)の自我エネルギーの比較低値或いは絶対低値「ツー・ロー」と、CP(父親的自我)・A(大人の自我)・AC(従順な子供の自我)のエネルギーの比較高値或いは絶対高値「スリー・ハイ」によって特徴づけられます。そして"ツー・ロー"と"スリー・ハイ"のコントラストが際立てば際立つほど、しばしば「Wの悲劇」とも呼ばれる深刻な状況を生み出します。
このエゴグラムパターンを持つ人々は、高い理想(CP高値)と現実との間でバランスを取ろうと格闘し(A高値)、周囲との関係性や他者の目を過度に意識するため(AC高値)、自分の本心や願望を素直に表現することが難しい(FC低値)のです。
W型の特徴としては、極めて高い社会性が挙げられます。彼らはルールや規則を重んじ(CP高値)、理性的な判断を行い(A高値)、他者を思いやる気持ちも豊か(AC高値&NP高値)です。しかし、本心の声を抑え込む傾向が強い(FC低値)ため、内面に葛藤やストレスが蓄積し、無意識のうちに自己破壊的な方向へと進んでしまうリスクがあるのです。
5つ全ての自我エネルギーが日本人平均エリア内に収まる程度のW形であればさほどの心配はありませんが、トリプル・ハイとツー・ローの格差が2エリア以上となり場合は要注意です。加えてトリプル・ハイがコード4-5エリアの場合は細心の注意が必要です。
環境の劇的な変化で一時的に際立ったWになることは往々あります。例えば次のようなケースです。
・進学や転校で学校が変わる
・初めての単身赴任
・意図せぬジョブローテーションで他の職場・他の担当に変わる
・初めて又はそれに準じる転職
・初めて或いはそれに準じる失職
・引っ越しから間がないタイミングでの先住者たちとのトラブル
・配偶者の死
・子供の死
(等々)
しかし場合によっては一時的では済まず、長期化してしまうケースがあるのです。そしてそれが常態化していくプロセスの中で自傷行為、蒸発、最悪の場合自死に至るケースさえあるのです。
「もうダメ。死ぬから」などといって周囲を驚かすような人がいますが、そうしたSOSに対して心ない言葉を返す周囲の人もいます。「本当に自分で死を選ぶ人は、そう言う前に実行してるから」などと。往々最悪の事態になる手前の人が、誰かに助けを求めるサインとして死をほのめかしますが、果たして一歩か二歩手前であるという保証はないのです。そう言い残して、そして誰からの支援も拒絶してすぐに旅立ってしまう人もいるのです。私の親しくしていた知人にも、親族にもそうした事例がありました。ですからサインを発している人を突き放すような言葉は避けなくてはなりません。
ところがエゴグラムパターンのW型の場合、切れ込みの深い際立ったW型が続くと、社会性が高いだけに弱音を吐かず、だから本当にその葛藤をおくびにも出さず、なんのサインもないまま旅立ってしまうことがあるようですから注意が必要です。
高いCPとAは社会性を担保します。高いCPとACは公共性を担保します。ですから世間一般で、他人様に迷惑がかかるようなことは絶対にしたくない、言いたくないのです。だから愚痴をこぼさず、悩みを打ち明けず、言いたいことが言えず(トリプル・ハイを前提とした極端なFC低値が原因)、葛藤をため込み続けるのです。
FCのエネルギーが日本人の平均より上位エリアにあるようなW型であれば、たまったストレス葛藤を時に吐き出すこともできますが、それでも周囲の人に迷惑をかけるような吐き出し方はしません。NP低位型かんしゃくタイプや、UⅡ型爆発タイプとは違うのです。日常とは離れた場所や環境のなかで自浄します。ですからどのみち葛藤をため込んでいたことを周囲は気づきません。
しかし際立ったW型の場合、FCエネルギーの落ち込みが大きく、一方で他者の顔色が気になり過ぎて(AC比較高値或いは絶対高値)、吐き出すことができないのです。いや正確に言えば吐き出したいとさえ思っていなく、にこにこしながら、常識的な立ち居振る舞いの陰で、ただただ鬱々とした葛藤を溜め込み続けていくのです。
そして比較低値或いは絶対低値のNPエネルギーによって、そのような現状、そのような自分、そうした状況に気づいてくれない周囲を許せないのです。NPは受容、許容のエネルギーです。これが低いと理想と現状の差が受け入れられなくなります。
通常NP低値に起因するグラフの凹み部分にはフラストレーションが溜まるとされていますが、そのフラストレーションのエネルギーが、現状打破のエネルギーに変換されず、厭世観を育み、最終的には現状を打破するのではなく、自分自身の物理的存在を打破してしまうのです。
NP起因の不寛容のエネルギーを現状打破、つまり理想を実現する「問題解決」に向けることができれば、問題解決志向の頼もしい人財となります。しかし上手にそれが転換できないと、人生や世の中に対する希望が失われ、「理想と現実は違うよ」などと自分に言い聞かせ、そのくせ社会性が高いものですから周囲にはバランスの取れた、前向きなことしか言いません。それでいてニコニコしているのです。
フラストレーションの蓄積が一つ目の悲劇。そしてそれを吐き出すことができずに葛藤が溜まっていくことが二つ目の悲劇。よって"ダブルの悲劇"なのです。
高い社会性、公共性を示し、困難に臨んでも愚痴もこぼさず、前向きで建設な言葉を口にし、にこやかで、常識的で、気遣いができて、聡明な人が、突然自ら悲劇的な最期を遂げるというようなことがあります。
「全然気づかなかった」「えっ、なんであの人が」「そういうタイプじゃないでしょう」「絶対なにかの事件に巻き込まれたに違いない」「あの人は自死を選ぶ人なんかじゃない」
そうしたケースでは、このような周囲の声が聞こえてきたりします。
また昔テレビでよく放映されていた「この人を探してください」といった失踪人捜索を訴える番組がありましたが、例えば失踪した伴侶をして「悩みを抱えているそぶりは微塵もなかった」とか「悩みがあったら必ず私に相談してくれていた筈」「今日もニコニコしながら"いってきます"と勤め先に向かった」「勤め先でもトラブルを抱えている様子は一切なかった」「きっとなにかの事件に巻き込まれたに違いない」と訴えるケースが皆さんの印象にも残っているかと思います。
驚くべきことに、そのようなケースでは、失踪先の別天地で名前を変えて新しい人生を生きていたということが幾つも報告されています。
だからその人のエゴグラムパターンがWだったのかというと、そうしたエビデンスはありません。しかし感応や言動特性が、W以外のなにものでもないことを訴えているものと考えられます。いや、それ以外の可能性は考えられないと言っても過言ではないでしょう。
ではW型の人に、極端な決断をさせないためにはどうしたらよいのでしょう。
W型の人はAが高いのです。自分がW型であり、そのエゴグラムパターンにどのような特徴があり、どのような危険を孕んでいるのかを理解できれば、自分で自我バランスを修正し始めるケースが多くあります。つまり"気づき"です。
AやCP、FC定位の人は気づきが少ない傾向があります。ですから放っておいてはいけません。しかしAが高い人は、気づきを得やすく、またひとたび気づけば、孕んでいる危険が実は社会性や公共性という観点では理想的ではないと結論付けやすくなります。そして社会性や公共性の維持を理想とする自我バランスがあるために、自分で自分を調整していくことが可能となるわけです。
アドバイスとしては、一にも二にも、W型の人が自分の本心に気付くことです。立派な存在感を維持しているものの、しかし自己反省の時間を確保し、内面的な葛藤について、パターン改善の意識を高めることが求められます。
参考:金子書房「新版 エゴグラム・パターン/TEG(東大式エゴグラム)第2版」








